2023年7月30日に日本図書館情報学会編『図書館情報学事典』(丸善刊, A5判, xxiii, 726p. 函入り)が刊行されました。この報告は,『日本図書館情報学会会報』No.182(2020年9月)の中間報告に続く,最終報告です。
この事典は本学会創立70周年を記念して企画編集を行いました。2019年夏から準備会を開催し,2020年度から編集委員会を立ち上げました。すでに報告しておりますように,編集幹事会で中心になった7人の会員に加えて編集委員を10人の会員にお願いし,さらに編集顧問を3人の方に依頼しました。執筆者の総勢は会員を中心に178人です。
学会編集のものとして『図書館情報学ハンドブック』(第2版, 1999)が同じ丸善から出されていましたが,今回の事典はそれを継承しながらもかなり性格を変えています。ハンドブックが20世紀までの印刷出版・パッケージコンテンツ中心の図書館情報学を前提とし,実務的な知やスキルを体系的に提示するという性格を持っていました。それに対して,今世紀に入ってデジタルネットワーク社会に移行したことにより,コンテンツがネットワークで入手可能な状況のもとで図書館情報学自体にも大きな変化が見られます。今回の事典は大きくは以前の体系に基づきながらも,他分野との境界があいまいな不定形の知やスキルを記述し,また,体系的な記述よりも執筆者の自由な展開を可能にして読み物としての性格をもたせようとしました。
全体としては10部門にして,部門ごとの編集体制をつくりました。基本的に見開き2ページで1項目とし,4ページや6ページの項目もつくっています。中項目レベルで287項目,小項目を入れると全体で339項目になります。部門や項目の性格によりますが,従来型の知やスキルを記述したものと,新しい情報環境を反映させたり図書館情報学の概念を拡張させたりした試論的な項目も含まれます。
丸善は同じ体裁で各分野の専門事典を多数刊行しており,今回の事典も基本的にはその編集方針を受け継ぎ編集スタッフの支援を受けています。項目ごとに参考文献をつけ,ページ内の引用・参照文献は巻末に項目順にまとめているのはその方針に基づきます。ただし,図書館情報学の専門学会であることもあり,項目間の参照関係の指示や索引作成に特徴をもたせるために,編集委員会に索引チームを設けて念入りに方針を策定した上で作業を行いました。
編集委員一同は,この事典が20世紀までの図書館情報学を踏まえた上で,21世紀の新しい展開に対して対応し,今後に向けて一定の指針を与えるものになることを信じて世に送り出すことにしました。どうか忌憚のない叱正,批判をいただき,この事典を元に新しい研究領域の議論が展開されることを期待します。
『図書館情報学事典』編集委員長 根本彰